簡単には給料は上がりません。労働条件はよくなりません。残念ながら、それが事実です。
前回の春闘で、なんと23年ぶりのベアが実現しました。23年、それは赤ん坊が大人になり、大学を卒業して就職するまでの時間ではないですか。念のために書いておくと、ベアはベースアップの略で、月々の手取りが増えるだけでなく、ボーナスや将来の年金にもかかわってくるので、当局はこれを増やすことには、ことのほか用心深いのです。ごくわずかな額でしたが、長年労組に加入していた人の中には、とうとうベアが出たというだけで感動する人もいたほどです。
このベアやもろもろの(とはいえほんの少しにすぎないのですが)手当のアップは、労組がしぶとく交渉したから実現したのです。「しぶとく」、そう私は書きましたが、春闘と名がついている団体交渉は、なんと本格的な暑さとなった7月まで繰り返さなければならなかったのです。
労働組合は何をやっているのか。入ってメリットはあるのか。「入りませんか」と誘われた人の多くがそう尋ねるようです。組合費がかかるから、コスパを気にしているのですね。けれども、そもそもコスパ以前の問題なのです。加入していることによって、堂々と、給料を上げてほしい、待遇をよくしてほしいと当局とやり合えるのです。そうでなければ、いったいどこで言えばいいのか。
自由、平等、さまざまな権利・・・それらは、あたたかい陽がさすように、慈雨が降るように、心地よい風が吹くように、当たり前に私たちのもとにやって来たのではありません。少しずつ、戦ってそれらを勝ち得てきたのです。面倒ですが、くたびれますが、嫌になってきますが、しかし、やらないわけにはいかないのです。
世界的にも、どうやら安定性はますます失われていく方向にあるように見えます。将来はどうなるのか、誰にもわかりません。でも、だからこそ多くの人が手を携えて、少しずつでも労働環境をよくし、気持ちの面でもお金の面でもより多くの余裕が持てるようにしていかなければなりません。明るい未来というのは、その先にしかないのではないでしょうか。
金銭的な問題もさることながら、負担が重い仕事をされている方々がいます。仕事のせいで土日もつぶれて、家族が壊れていく。多過ぎる夜勤で疲労困憊する。仕事のための出張のはずなのに、ほとんど手当がない。もうちょっとフレキシブルに働けたら、子育てや介護が楽になるのに。これらは実はもう長年指摘されてきた問題なのですが、なかなか解決されないのです。引き続き、迅速な改善を目指さなくてはいけません。でないと、離職者ばかりが増え、慶應に就職したいという若い人も減ってしまうことは間違いありません。もう今だって、よその有名私大に比べれば、給料のアップはスズメの涙だったのですから。いくら愛校心がある人だって、かすみを食って生きているわけではありません。
そして、日本中で労組の衰退が指摘されていますが、今日の労組の役割とは、特定のイデオロギーの主張をすることではなく、ごく普通に働いている人がごく普通に思う疑問や不満を解決することなのだと、いっそう多くの方々に理解してもらい、加入してもらうことに力を注がなくてはなりません。みなさまのご協力、ご尽力をお願いいたします。
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